データ基盤の工程は 5 つに割れる。出どころからデータを運ぶ抽出・転送、溜めて SQL で読むデータストア、Bronze から Gold へ磨く変換の 3 つが前半にあたる。
後半は、転送と変換と通知を束ねて定期実行するオーケストレーションと、Gold 層を各部署に届ける可視化になる。役割の境目は道具の境目でもあり、1 つの道具が 2 役を兼ねることは少ない。
候補は役割ごとに 2 個から 5 個しかない。この 5 役割ぶんの名前を覚えれば、実務で出てくる構成のほとんどは読める。
実務で見る並びは、おおむね 3 通りに収束する。GCP で縦に揃える、AWS で縦に揃える、役割ごとに最良を選んで横断で組む、の 3 つになる。
縦に揃えると、権限も課金も 1 つのクラウドに収まる。データが別のクラウドへ出ていかないので、経路を用意する手間も消える。
横断で組むと、役割ごとに最良を選べる。代わりに契約先と請求が増え、障害が起きたときの問い合わせ先も分かれる。
抽出・転送だけは、クラウドを決めても道具が 1 つに定まらない。運ぶものの性質が先に効くからで、表データの一括転送とログの連続転送では必要な仕組みが違う。
表データを日次でまとめて運ぶなら Embulk、発生し続けるログをそのまま流すなら Fluentd。どちらも無料の OSS で、動かすサーバーは自分で用意する。数百種の SaaS からまとめて取り込むなら Fivetran が早い。
変更差分だけを継続的に流す場合は、行き先の DWH が道具を決める。BigQuery なら Datastream、Redshift や S3 なら DMS、Snowflake なら Fivetran になる。Snowflake は AWS のサービスではないため、DMS の転送先に入っていない。
DWH の 4 択は、機能差を比べても決まらない。4 つとも SQL で読める分析基盤として成立していて、差が出るのは運用工数・マルチクラウド・コストの読みやすさの 3 点になる。
BigQuery と Athena + S3 はスキャン量に応じた課金で、データが少ないうちは安い。ただし設計を誤ると請求が跳ねるので、コストの読みやすさでは Redshift に劣る。
AWS 中心の会社が Snowflake と Redshift で迷ったときは、外部組織への共有とマルチクラウドの有無で切れる。実務者 20 人前後への聞き取りでは、最近は Snowflake を選ぶ例のほうが多い。
残る 3 役割は、迷う幅が小さい。変換はほぼ dbt に決まり、SQL が書ければ扱えて、モデル間の依存も自動で解ける。
対抗は Dataform で、BigQuery の中だけで同じ変換をやる Google Cloud 純正の道具になる。追加のホスティングが要らず無料で使える。ただし変換層の外まで束ねる力はなく、転送や通知まで含めた全体には Cloud Workflows のような外側の仕組みが要る。
オーケストレータは中心のクラウドで決まり、GCP なら Cloud Workflows、AWS なら Step Functions になる。可視化は予算で決まる。無料なのは、Google のダッシュボードである データポータル と OSS の Metabase になる。AWS 側の Amazon Quick は閲覧セッション単位の課金で、表現の自由度なら Tableau になる。
同じ役割の候補でも、運用の持ち方は 3 つに分かれる。契約して使うフルマネージド SaaS、クラウドに組み込まれたサービス、自分でサーバーを持つ OSS の 3 分類で、この列の選び方が運用工数をそのまま決める。
調べるときに名前で混乱しやすい製品が 2 つある。データポータルは一度 Looker Studio という名前になり、2026 年 4 月に元の名前へ戻った。Amazon Quick は 2025 年 10 月 9 日までは QuickSight という名前で、いまはダッシュボード機能がその中の 1 部品になっている。
| 役割 | フルマネージド SaaS | クラウドネイティブ | OSS (自前運用) |
|---|---|---|---|
| 抽出・転送 | Fivetran | DMS / Datastream | Embulk / Fluentd |
| データストア (DWH) | Snowflake | BigQuery / Redshift / Athena + S3 | — |
| 変換 | dbt Cloud | Dataform | dbt Core |
| オーケストレーション | — | Cloud Workflows / Step Functions | Apache Airflow |
| 可視化 (BI) | Tableau | データポータル / Amazon Quick | Metabase |